世界各地域での医学地図 |
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世界各地の伝統医学にとって20世紀は、それぞれ物置の隅やら押し入れの奥に追いやられ、元の場所には西洋医学がすっかり取って代わるといった不当に虐げられた時代でした。 その後、現代科学を基盤とする西洋医学はどんどん進化、発達を続け、最近まで伝統医学はもう忘れ去られる運命かと思われていたのです。 ところが、21世紀をを前にして、またぞろ物置やら押し入れから引っ張り出されようとしています。 こんなにも発達したかと思われた西洋医学でも治らない病気も多々ある事がわかってきた上に、何より心や身体の健康に不安を持つ人の数が特に、西洋医学が行き渡っているはずの先進国で少しも減らないのです。 この1世紀の間の地球規模の環境汚染を始め、生活環境の激変に心も身体も追いつけない人がじわじわと増えています。 最も進化し適応能力の高い生物である人間をしても、付いていけないスピードで世界が変わりつつあるのですね。 こうなると、このように世界を変えた現代科学を基盤とした西洋医学だけではミイラ取りがミイラになり兼ねない、長い歴史の裏付けを持つ伝統医学の知恵も再検討すべき時が来た、という医学観の変化がヨーロッパはもとより、アフリカ、南北アメリカ、アジア各国まで今や共通のものとなったのです。 その結果、各国で国立や王立の伝統医学研究所の開設が相次いでいます。 世界で最も多くの人口により試されつつ現存する東洋医学については別項を参照して頂くとして、このページではその他の伝統医学について掲載します。 それから、日本における伝統医学でもある鍼灸、漢方医学については中国とはまた別の発達過程と現在に至る紆余曲折=治療効果があるのに何故に病院で鍼灸が行われないかとか=がある訳ですが、これを書き出すと凄い量になりそうなのです。 まさに「小日本医学史」の如くで 一旦書き始めたのですが余りに長くなってしまい中断しています。 後日何とかすっきりまとめた形で掲載する予定です。 |
上の地図に書かれた医学名で日本人にとって多分最も馴染みのないのがこのホメオパシーではないかと思います。 私が初めてこの医学について、来日したフランス人医師から教わったのが約30年前ですが、 その後も日本においてその名が浸透した気配は全くありません。 19世紀初頭にドイツのザクセンの医師サミエル.ハーネマンが確立した薬物治療医学です。 「ホメオパシー」とは正確にいうと医学名ではありません。 病気の治療に対するコンセプトとでも言いましょうか。 薬物治療にはその病気の症状と反対の効果を生み出す薬で症状を押さえる治療法と、 逆にまるで火に油を注ぐかのように出ている症状と同じ状態を起こす薬を使う方法 つまり毒をもって毒を制す方法が考えられます。 これは例えば校内暴力で荒れている学校を沈静するために 体育会系の暴力教師を派遣して校内暴力を押さえ込むといった一見ちょっと難しい治療法です。 このような考え方の治療法を「ホメオパシー」と言いまして「同毒療法」とか「同病療法」とか訳されています。 これと反対の前者は現在一般的な薬剤療法で「アロパシー」といいます。 後者の「ホメオパシー」治療は、患者の容態の時間的推移を的確に読みとりながら治療を進める必要から豊富な薬物知識とデータの解析技術、豊富な経験が求められます。 勿論「ホメオパシー」の考え方は昔からあって ギリシャのヒポクラテスは、紀元前4世紀には 「同類をもって同類を治す。」という類似の法則をしっかり定義づけているのです。 これを基に、主に自分の身体で実際に人体実験をしながら、 この治療法では最も困難な治療の薬剤量を確定して 「ホメオパシー」を単なるコンセプトから一つの医学として確立したのがハーネマンです。 彼は1810年に「治療術の原則」(Organan of the art of healing)を出版し、 その治療法はヨーロッパに広く紹介されたのですが、 同時期に飛躍的に発達した近代医学にすっかりお株を奪われ衰退してしまいました。 ところが、近年、再評価の機運が高まり 本国ドイツはもとより、フランス、アメリカでも専門医が多く現れ、 イギリスではホメオパシー専門病院が設立されたり、王立ホメオパシー研究所が発足したりとヨーロッパやアメリカで急速な展開を繰り広げています。 現にホメオパシー治療薬メーカーは年々売り上げを大幅に伸ばしているそうです。 しかし、どういう訳か日本にはその波が全く及んでいません。 本当に不思議です。アウトラインはこれくらいにして、 実際に「ホメオパシー」治療の進め方を簡単に説明します。 そうすれば、なぜ今見直され、各国が再研究に力を注ごうとしているか、また鍼灸師の私がなぜ「ホメオパシー」を自分のホームページで皆様にご紹介しようとしているかがお解り頂けると思います。 |
「アロパシー」=現在の一般的な薬物治療法=だと鎮痛剤(バファリンとかアスピリン等々)が処方されて痛みの原因を除去するというよりも、薬理作用で身体を変化させ、出ている痛みを感じないようにします。 原因に働きかけて治している訳ではないので、時に再発しやすく、慢性化させてしまうのを防ぐ手だても特にありません。 「ホメオパシー」ではこの場合その患者の実際に起こしている頭痛とピッタリ同じタイプの痛み方の頭痛を起こす薬を処方します。 (健康人を対象にして実験を行い、あらゆるタイプの頭痛を起こす薬がホメオパシーの治療薬としてリストアップされています。 薬種一覧ではヘーリングの「ホメオパシー薬種一覧アメリカ版全16巻」が最も完成されているようです。) すると同じタイプの頭痛を起こす薬なのですから飲むと、一時(いっとき)、頭痛がドッとひどくなった様な感じになります。 この時、身体は元々の頭痛の痛みを「10」としますと「10」の痛みに対して働こうとしていた自然治癒力(治癒に向かう生体エネルギー)を、 これは大変とばかり、突如もっと重病な「20」~「30」の痛みの時に発するレベルに治癒力のエネルギーを強めるのです。 この突然のダイナミックな自然治癒力の勢いは頭痛のみならず頭痛を起こしていた原因にまで波及して治癒させてしまう可能性があるのです。 ですからホメオパシーでは、一時(いっとき)だけドッと症状を強める薬の最低量が常に求められます。 薬の量が多いと当然薬の痛みが残ってしいます。 薬は一瞬に症状を強める点火剤OR着火剤的に使用するのですから常に必要かつ最低限の量が決定されるべきなのです。 患者の治癒力のリアクションが弱くて痛みが残ってしまった場合は同じ症状を起こす別の薬(同じケースの実験データに基づいて決定された薬)を検索して処方します。 同じ薬を2度飲ますと身体は覚えていますので、もうダイナミックなリアクションが望めなくなるからです。 ですから「ホメオパシー」では同じ薬を飲み続ける事はありません。 「ホメオパシーも痛みを取るのに薬を飲むのなら、鎮痛剤(アロパシー)を飲んで痛みを止めるのも同じ事じゃないの?」 そう思われるかもしれませんね。 でもよく考えて頂くとお解りだと思いますが、 ホメオパシーでは実際に頭痛を治したのはあくまで自分自身の自然治癒力です。 薬はあくまで治癒力の勢いを活気づけただけです。 それに薬の量も驚くほどの極々微量です。 (従って薬代金も安い。) 鎮痛剤は薬理作用が全身に及び、むしろ自然治癒力を抑制させる恐れもあり、常用すると副作用や慢性化も招きかねません。 その点ホメオパシー治療で治った場合は後の心配が何もありません。 慢性病やアレルギー性の病気は現在の西洋医学ではなかなか治療成果が上がらず悩みの種となっています。 そのような現状も含めて自然治癒力を強めて病気の原因を取り 副作用のない「ホメオパシー」が再び、おおよそ200年ぶりに脚光をあびているのです もちろん「ホメオパシー」にも短所が色々あります。 自然治癒力という生体の病気に対するリアクションを利用する為、余りにも衰弱していて生体が反応力を無くした患者では良い効果が望めません。 老人に比べると子どもの方が効果が的確で速いのも同じ理由です。 症状が複雑で多岐に渡った重病患者も薬種の検索が困難です。 客観的データによる診断がほとんど出来ませんので漢方、鍼灸医学と同様に医師個人の能力次第で治療結果に大きな差が出るのも問題です。 |
鍼灸治療を何度か受けた経験のある方なら、 ここまで読んで頂いて既にお気づきかと思いますが、鍼灸治療のコンセプトはホメオパシーとよく似ています。 同じく「頭痛」を例に説明します。 例えば、痛みが後頭部から目の奥まで走るタイプの頭痛を訴える患者さんを治療する場合 正確なツボに鍼を刺すと、 一瞬その痛みが「ズシン!]と後頭部からスタートして目の奥までより強く再現されます。 思わず「当たった!」と鍼治療に馴れた患者さんなら声を上げる瞬間です。 鍼によって強く再現された痛みを数秒の間響かせると 次に鍼を抜いた時にはもう先の頭痛は消え失せてどのようにしても、 例え同じ場所に鍼をもう一度刺しても、もうあの痛みは再現されません。 つまり治ってしまったのです。 ですから鍼の効果はホメオパシーと等しく即効性があるのです。 そしてどちらも病気の原因によらず、症状によって治療を進めるのです。 例えば、 日本脳炎による頭痛であろうと、長時間のパソコン使用による頭痛であろうと、 同じ様な痛み方をすれば治療の方法は同じです。 自然治癒力を反射的に増幅させ、治癒エネルギーの向かうべき位置や場所(方向性)を強調して 病を回復させるのが目的の医学なので原因は基本的には問わないのです。 むしろ、「痛み」や「症状」を身体を守る為の素晴らしい福音と考え、 痛み方や場所などの情報を大事にします。 もし、その頭痛が鍼でより強く全面的に再現されず、中途半端な再現に終わると 鍼を抜いてもまだ最初の頭の痛みが残っていたりします。 その場合はもう一度 別のツボ を刺激してチャレンジします。 同じツボは一回の治療には2度使いません。 身体は最初の鍼刺激を記憶しているので同じ場所を刺激しても リアクションが極端に悪くなるからです。 治療の正否を左右するのは、 まず第一は患者の病態を正確に把握することですが、 次はホメオパシーでは薬、鍼灸はツボの検索で、 その次に非常に大事なのは、薬の量、鍼灸ではツボへの刺激量(鍼の太さ、刺す本数、深さ、灸の数等々)です。 どちらも生体の自然治癒エネルギーを喚起させるだけが目的ですから、その刺激量は常に必要最低量であるべきなのです。 ところが実際には生体の刺激に対するリアクションは個人差が非常に大きくて この刺激量の決定はとても難しいのです。 鍼の刺激がその人にとって大きすぎると返って症状が悪化してしまい 治療が失敗に終わります。 この様な目にあった患者さんは「私は鍼が合わない」等と言われます 自然治癒力で病気を治すのですから合う合わないもないはずなのですが、刺激量を誤るとこの様な誤解を受けてしまいます。 鍼治療の失敗はひとえに刺激量のミスによります。 (ツボを間違えても刺激が小さいと余り問題は起こりません。) 個々人の刺激に対する許容量やリアクション(反応力)の大小を正しく予知し、刺激量を決定する事は非常に高い能力を必要とし、 多くの患者を治療して経験を積み、データをたくさん持つ以外には修得は困難です。 (ツボを正しく検索するテクニックは個人の能力や、努力次第で、ある程度短期間で身に付けることも可能ですが) 近年、鍼灸が注目されるのは、< 西洋医学と東洋医学の融合(いいとこ取り)こそベストな医療ではないかと考える風潮が芽生え出したからだと思いますが、 これが結構難しいのです。 以下の実験データをご覧ください。 中国における実験データです。 (鍼灸の医学としての認知度の低い日本でこの様な実験を行う事は現時点では不可能です。) 一般に鍼灸治療は難しいと思われがちな 急性黄疸型伝染性肝炎患者115人をランダムに鍼灸治療群、西洋医学治療群、両医学結合群に分け治療効果を観察したデータです。 |
急性黄疸型伝染性肝炎患者 | 鍼灸治療群 |
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ご覧の通り、両医学結合の治療結果はよくありません。 (このデータに関しては私自身の治療経験からも妥当な数字だと思っています。) 患者本人の自然治癒力を増強させて治すのを目的とする鍼灸医学と薬理作用で身体を変化させて、 むしろ自然治癒力を抑制させる傾向を持つ西洋医学とでは身体はマッチポンプ状態に陥ったのでしょう。 鍼灸の特徴である即効性が完全に打ち消されています。 もっとも、西洋医学も元は、ヨーロッパ各国の伝統医学を統合しながら発達を重ねて現在に至っている訳で、 その治療コンセプトも鍼灸に比べて多様性に富んでいます. ですから、他の病気の場合は又違った結果になる可能性も勿論多々あります。 という点を考慮に入れましても、 やはり無条件に両医学を併用する事は賢明ではありません。 このように鍼灸の良さが、全く発揮されない結果になる場合もあるのです。 (とは言うものの日本の場合、中国と違い、一般に鍼灸を病気治療の医学と知らない人も多く、又保険診療も行われない事情もあり、従って、病気治療の為の患者数が少ないために総じて中国に比べると日本は色々な病気に対する経験不足の鍼灸師が多い等々現実問題として凄く難しいところですが。) ここまで読んで頂いた方にはお察しいただけると思いますが、 私は、むしろ鍼灸医学はホメオパシーと結合させる事で相乗効果を発揮し、素晴らしい結果を生むはずだと考えます。 しかし実際にはこの様な医療施設は日本にありません。 ) もし将来、この二つの医学が共同研究を開始すれば、21世紀の新しい医学のスタートとなるはずですが日本には鍼灸師はいてもホメオパシーの専門医がいませんので、そのような施設が出来るとしたら, 鍼灸師もホメオパシー医師も両方が沢山活躍しているヨーロッパかアメリカに違いないでしょうね。残念ながら。 余談ですが、現在、アメリカだけでも鍼灸専門学校が50校近くあります。 それに総人口あたりの鍼灸治療の経験者の比率%も圧倒的にアメリカの方が多いのが現状です。 これは病気によっては鍼灸治療の方が速く治るケースがある事が判った為に、アメリカの民間疾病保険会社の数社{アメリカには公的保険がありませんので} が支払額を減らす目的で, 病気によってはまず最初に鍼灸治療を受けないと治療費用を保険で支払わないというシステムを取り始めたからだそうです。 |