★鍼灸治療の衛生上の問題は? ★

名前 = M.K
性別 = 男性
age = 20to29
メッセージ =
骨折後のリハビリについて、鍼灸は大変有効とお聞きして、是非とも母には治療を受けさせたいと思うのですが、安全性について心配する点があります。
母の左肘間接は、補強のための器具がたくさん入っています。
(複雑脱臼骨折で、間接の骨はばらばらになっていたため)。
その上母は、細身のため間接の周りの肉付きも少なく、針などの治療によって、器具(骨)に鍼が達して、雑菌が入るのでは・・・と心配です。
母の手術を行った担当医に、鍼灸についてお聞きしたところ、やはり「雑菌が進入することが考えられなくもないので、私はおすすめでない」とのことでした。
骨折後に一番注意しなければならないのは、雑菌の進入らしいです。
実際に、鍼灸の治療によって、菌が体内に進入するケースというのは、考えられるのでしょうか?。母の骨折はかなりひどいものだったので、余計に心配です。
失礼を承知でお聞きしたいのですが、鍼灸治療の、衛生上での問題は、いかがなものなのでしょうか?
アドバイスのほど、宜しくお願いします。



M.K 様へ

お母さんの担当の医師が「感染が考えられなくもない」「鍼治療はやらない方が良いでしょう」と仰るのは西洋医学の医師なら、ごく当たり前の発想で当然だと思います。
以外だと思われるでしょうが、
実はハリで雑菌に感染する可能性は、信じ難いと思いますが、例もなく限りなくゼロに近いんです。

(来日して開業している知人の中国人鍼灸師が昨年、治療後細菌感染で悪くなったと恐喝される事件がありましたが、これも見舞金目当てと外国人へのイヤガラセの狂言だと後で判明しました。)

数千年前の中国では消毒液などなく全く消毒せずに鍼治療は発達しました。
日本でも数百年も昔から鍼は主に盲人の方がこれといった消毒もせず伝えて来ました。
それでも感染のトラブルとは無縁でした。
今はアルコールで消毒しますが昔は何もしないで何のトラブルもなかったのです。
戦後GHQが非科学的で野蛮で不潔なものとして鍼灸を禁止しようとしたのですが、何処にも感染のデータがなかったので禁止できなかったと聞いています。
多分、一例でもあればダメだったでしょうね。

※代替医療で過去に問題が起き裁判沙汰になったのは、カイロプラクティックや整体治療などの身体を外部からの大きな力で変化さそうとする治療法ばかりです。
その結果、最近はこれらの治療法は”ソフトカイロ””ソフト整体”等と骨折をはじめ様々な事故を防ぐための「ソフトな刺激」を強調していますね。

私も実は、鍼灸学校生の頃には鍼治療にも感染の可能性があるのではと考えましたが、
その後30年以上経ち、結局その様な事実は自分は勿論のこと周りからも聞いたことも皆目なくて、おそらくほとんどの鍼灸師も全く感染例がないのを実はちょっと不思議に思いながらやっているはずですよ。
例えば、私が自分自身に鍼を打つ場合、特に外出時なんかで疲れた時など洋服の上から鍼を打ちます。
勿論消毒もしないでオーバーなんかも着たままですが脱がずに洋服生地を貫通して肩とか鍼治療します。
頭痛の時は靴下の上から足先に鍼を打ちます。
自分自身の治療は30年以上そんなことやってますけど何も問題ありませんでしたね。
元々私はちょとした火傷や切り傷でも化膿しやすいタチなんですけどね。
(こんな事は患者さんには絶対にしませんからね。念のため)

ですから「なぜ鍼は消毒しなくても感染を起こさないか」も現在の科学では説明できない大きな謎の一つだと思います。
おそらく鍼を打つとその部分の血行が一気に促進され白血球が集まり抗菌力が増大するのでしょう。
消毒について大変うるさくなったのは日本でも最近の話です。
実はアメリカやヨーロッパ諸国で鍼治療が普及し始めて、彼らが針による感染の可能性を強く言い出したからなのです。
彼らはまだ鍼灸の歴史が浅いために鍼と注射とを混同してるのではないでしょうか?
お母さんの担当医や岸本さんが心配されるのは恐らく「注射針」が原因で細菌やエイズなどの感染が頻繁に起こる事から連想されてのことだと思います。
注射器は鍼治療をヒントに考え出されたものですが、実は注射針は正確には針ではなくてごく細いパイプなのです。
このパイプの中の空洞部を医薬液が流れ体内に注入されるのですね。
注射針の内部は空洞のパイプですから最初から中には空気が入っています。
医薬液が通過した後に注射針の内壁に付着した薬の一部が注射針の空洞部の空気中の雑菌と混じり使用後その状態のまま放置すると針のパイプ内が温室と化して雑菌の繁殖を促すのです。
そして次回にそのままの状態で使用されると医薬液がこの繁殖した雑菌もろとも体内に入るのですね。
これは無論、使用直後の丹念な消毒によって防げるはずなのですが、いかんせん細い注射針内部の、つまりパイプの内壁部の消毒を確実にすることは、付着した薬剤が凝固していたりすると非常に困難です。
それで現在の日本では(先進国では)注射針は全て使い捨てになっています。
ところが鍼灸で使う針は注射針とは違ってパイプ状ではありません。
針の内部に最初から雑菌を含んだ空気が入るスペースもなく、繁殖する空間もありません。
この針の内部にパイプ状の空間が有るか無いかで天と地ほども違いが出るのですね。
ですから鍼をアルコールで拭いて鍼表面の空気中の雑菌を除去すれば消毒はまず十分なのです。
しかし、細菌よりももっと微少なウイルス(特に肝炎ウイルスへの懸念が大きい)だとアルコール消毒だけで心配ないとは必ずしも言い切れません。
我々の免疫力も様々な要因で昔に比べて落ちていると言われていますからね。
ウイルスの絶え間ない進化と我々の免疫力低下が相まって過去には無くても将来も絶対にないとは保証出来ません。
それで現在は消毒済みの一回限りの「使い捨て鍼」か、もしくは「オートクレープ」という高圧滅菌消毒器に鍼を一回使用毎にかけるかのどちらかの方法が取られています。
しかし必ずしも日本中の全ての鍼灸院がこのどちらかの処置を取っているとは限りませんから、貴方のお母さんの場合は 事前に鍼灸院に鍼の消毒法を「オートクレープ使用」か又は「使い捨て鍼」かを確認されるのが良いと思います。

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