前屈しやすくなるツボ
★前屈しやすくなるツボ★

名前 = F.U
性別 = 男性
age = 40to49
メッセージ =
手のツボ(肘から手首までの間)でそこに針を打つと体をより前屈しやすくなると聞きましたがなぜなのでしょうか?また、そのツボを教えてください。お願いいたします。



こんばんは!ツボ探検隊の松岡です。早速ですが、おそらくそのツボは「外関」(がいかん)でしょう。
「外関」
甲側手首の横すじから、だいたい指二本程度肘側に上がった場所で、腕の二本の骨(とう骨=親指側、尺骨=小指側)の間に有ります。ちょっとした凹みがありますので確認して下さい。

但し私どもは様々な症状や疾病を治める為に非常に有効なツボとしてこの「外関」を使っていて、当たり前の話ですが、ただ単に「身体を屈曲しやすくする」為にこのツボを使う事はまず無いです。私どもの日常の診療でその様なニーズは30数年間一度も無かったですからね。

この「外関」は全身に分布する多くのツボ群の中でも身体全体を動かす波及効果が大きい「絡穴」(らっけつ)と呼ばれる役目を持つツボの一つです。
鍼灸医学では身体全体を巡っている主要ルートは「12経脈」(ルート)あると考えています。「外関」ツボはその中の「三焦経」(さんしょうけい)というルート上にあるツボですが、同時に「絡穴」として他のルートと「連絡」する役目を持っているツボでもあるのです。(絡穴は全体で15個有ります)

おまけに主要ルート以外のルート外バイパスとして「奇経八脈」という8ルートの「側道」もある考えられていて、このバイパス(陽維脈)とも交差している「八脈交会穴」の8つのツボの一つでもあります。メインルート上の重要なインターチェンジでありながら、バイパスにも往来できる優れモノのツボです。

つまり「外関」はたった一つのツボでも如何に身体全体を大きく変化させるパワーを持つかを証明する代表格のようなツボですね。「絡」や「交会」とは全身の機能と「連絡」している「交わっている」という意味で、この様なツボを刺激して身体全体のバランス調整を図るのです。

その為に「外関」は外界のちょっとした変化で体調がクルクル替わる身体機能バランスの悪い人、体調の不安定な人(自律神経失調症など)、精神の不安定な人(情緒不安定)青白い顔色の血の巡りが悪いタイプの人によく使います。つまり検査をしてもどこの内臓がどう悪いと云う訳でもないが、全体に身体が弱い、疲れやすい、体調が不安定な人はこの外関ツボのある「三焦経」ルートのツボ群の適応症といえます。(・・って云うか「三焦」は「五臓六腑」の一つですが「内臓」の名前ではなく身体の上中下の機能バランスという様な意味なのです)

上記タイプの人たちに起きる肩こり、耳鳴りや偏頭痛、腹痛、精神不安その他様々な症状を改善する働きを持つツボです。(もちろん他のツボとも組み合わせないと治療としては不十分ですが・・。)バランス機能を調整する効果から車酔い、船酔いにも有効です。「絡穴」の効果に対しては鍼灸医学では「気血を疎通する」つまり人体を動かしている様々なエネルギー成分の「部分的な停滞を解き放つ」と説明されています。しかしながら「ツボ」等という概念を持たない西洋医学では「絡穴」などという「しばり」も当然持つ訳が無く、単に手首近くにあるポイント(ツボ)刺激で何故その様な効果を持つかを科学的に説明するのはやはりまだまだ不可能です。

しかし鍼灸は中国という地球上でも最も人口が多い地域で長い歴史を紡いできた医学ですから、数千年の間におそらく何十億もの人間に対して人体実験が行われ追試されたという意味ではわずか100数十年の現代西洋医学とは「歴史的重さ」において鍼灸は数段勝っている訳で、よく東洋医学が西洋医学に比べて「副作用が少ない医学」と称されるのは単にその歴史の長さに依って繰り返し検証され淘汰されずに残ったモノだけが継承されているからに過ぎないのです。
ということから察すれば、現代西洋医学ももっともっと長い歴史を経れば、多くの薬害を体験した結果、現在では副作用が大きいとされている薬も将来的には改良或いは淘汰されて本当に良い薬だけが残り、あと数百年も経てばすっかり「副作用の無い伝統医薬」と称えられているかもしれません。 数千年の間に実は漢方薬も多くの「人柱」を経てきた訳ですが、発展途上の現代医学(新薬)は今後まだしばらくは「人柱」を必要としているという事ですね。

同じく「外関」を使った治療効果も中国の長い歴史の中で「否定」されることなく継承されている事実を思えば、現在の僅か100年ほどの歴史しか持たない科学手段で効果を証明できないからという理由だけで「全否定」してないがしろにする方がむしろ理不尽ではないでしょうか。

実際に私どもがこのツボを使って表記通りの効果を「瞬時」に再現できる事から察するに、「外関」ツボは全身を司る脳の中枢に向かって何らかの確定的な「信号を送る」働きを持っていると考えるのが妥当なのかもしれません。
鍼の効果は薬と違って「瞬時」というのが最も重要なキーワードに成っていますので、「脳」との関連を強く意識させられるのです。
歴史を軽んじる現代科学の盲信者によると、これらのツボ効果をマインドコントロールとか暗示力によると考える様ですが、しかし、実を云えばツボは暗示に掛かりやすい人間よりも、何の医学的予備知識も無い、「プラシボ=偽薬」など暗示効果の最も出にくい「動物」の方が身体構造がシンプルな分だけ効果がはっきり現れるのです。
近年になって欧米で鍼灸が認められ始めたのも実はペットの「犬」の病気がツボで素早く治る事が確認されたのも発端の一つになっています。その結果、むしろ日本よりも欧米の方がペットのツボ研究は進んでいるそうで当ホームページからも愛犬の難病の「てんかん」が外国人獣医師の行う鍼灸で良くなったと海外からメールを頂きました。ペットの病気はすべて鍼灸で治そうと研究している獣医師がイギリスを始め欧米で急増しているとのことです。何日も餌を食べず息も絶え絶えに横たわり今にも死にそうな犬が鍼を数本打っただけで数分後にはすっくと起き上がり、ガツガツと狂ったようにエサを食べ出すのを目の当たりに見るショックは獣医師としては例えようがないそうです。
人間の場合は数本の鍼でご臨終直前から一変してガツガツ食べ出すなんて事はさすがに無いですからね。もっともシンプルな小動物(!)という意味では人間の赤ちゃんも同じとはいえます。副作用に弱く薬害にも敏感な赤ちゃんだけでも病んだ時には先ず鍼灸を真っ先に行うべきではないでしょうか。

何と云ってもツボの考え方で病気を治すのは薬などの外部からの「他力」に依存せず元から有る自分自身の自然治癒力と云う名の自前の修復力のみで治したのと同じ事ですから、病気に罹った事による将来に渡るリスクは鍼灸医学で治した場合はほぼ何もないはずです。
(現代医学の薬で治すのも最終的には自然治癒力に依るのですが、最初から薬に頼らないで自己修復プログラムを起動させて治す方が他の組織への負担が少ない)
この事によりどんどん成長しなければならない赤ちゃんや幼児こそ、将来に及ぼすリスクをほとんど持たない医学を優先すべきではないかと思うのです。

最後に今後の事ですが、もしも将来これらのツボの働きが科学的に実証される時が来れば鍼灸医学は「代替医療」の枠を越えて現代医学の一分野として組入れられ、「鍼灸師」という中途半端な職業も無くなり、鍼灸は完全に医師の仕事となるでしょう。その時にはたぶん小児科医が真っ先に鍼灸を主に使う医師に成るかも知れません。
小動物やペットに対する効果が非常に高いのと同じ様に、小児にはいわゆる生活習慣病(成人病)などというやっかいな病気は有りませんし自然治癒力も活発な時期だけに鍼灸のパフォーマンスが非常に高いということです。また内臓機能が衰えて薬害に敏感という意味で逆に高齢者にも薬を用いないローリスク医療としての鍼灸が重宝がられるでしょう。
とは言うものの、その時期がいったいいつ頃のことなのか、ひょっとしたら明日にでも一人の天才によって科学的実証に成功するかも知れませんし、まだまだ半世紀以上もかかるかも分かりません。 しかし科学的実証には組織や機関からの経済的バックアップが必要なはずで鍼灸に対して「偏見」のある日本では難しいかな〜って気もします。
鍼灸は生命に元から備わっている能力(自然治癒力)を故意に操り駆使して病気を治す、もっとも頭脳的でテクニカルな医学とも言えるものです。この医学がより完成度を高めれば生命の自力で元に戻す能力(リカバリープログラム)を用いずに他力(薬)に頼る治療なんて如何に遅れた医学であるかと言うことに成るはずです。
一般の方々が鍼灸に偏見を持ち、無知なのはいた仕方ないことですが、日本の「医師」が不勉強で無知なのは罪が重い。先進国で「鍼灸」に対して一番無知なのは日本の医師達だという不名誉だけでも早く返上して頂きたいと願っています。

※「ツボ」をめぐる「なぜ?」 のご質問にはいつもながら熱くなって長い回答に成ってしまい恐縮です。


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