★鍼灸に関しての5つの質問★

> 名前 = T.U
> 性別 = 女性
> age =30to39
> メッセージ =
こんにちは。HPとても興味深く読ませて頂きました。
私も鍼灸師になることを考えている一人です。
といってもまだ迷っている段階で、Q&Aのコーナーなども参考になりました。

私が身につけたいと思っているのは「癒す力」です。
もっと正確には、ひとりひとりが自己治癒力を高めるための「手助け」ができるようになりたい、と思っています。

そのような観点から、気功を本格的に学びはじめて1年半たちました。
気功の指導や、外気治療ができるようになりたいと思っているからです。

でも、ご存知のように気功には公に認められている価値基準が何もありません。
もちろんだからといって気功の効果を過小評価するべきではないとは思いますが最近思うのは、自分が生涯をかけて仕事として行なっていくには、「不確か」過ぎるだろうかということです。

というわけで、学ぶ体系も資格制度も確立されている鍼灸を改めてみ直した次第なんですが、HPを拝見して、いくつか質問がでてきました。
お時間のある時に、お答えいただけますか。

((質問))

(1) どこで学ぶべきか?

国際的に見た場合日本の鍼灸の評価は低い、ということですが、
日本の専門学校で勉強できるのは実際、どの程度のことなのでしょうか。
世界的に日本の鍼灸免許が通用するしないはともかくとしても、
実際に「病気を治療する力」を身につけることはできないと考えた方がいいでしょうか?
外国の専門学校と比較して程度が低い、とうことですか。
もし日本の資格を取らなくても構わない、という条件付で考えた場合、純粋に本格的な鍼灸の力を身に付けたいと考えれば、どこで勉強することが望ましいと思われますか。

(2) 中国鍼灸と日本鍼灸について

HPの中では、二つを比べて日本鍼灸の方がベター、というようなニュアンスで書かれていたと思いますが、国際的に通用しているのはどちらの鍼灸なのでしょうか。

(3) 入試について

試験が非常に難しいということでしたが、どの程度むずかしいのでしょうか。
つまり、今から勉強しても、来年度の入試(今年の11月ころ)には間に合わない程、むずかしいでしょうか。
もちろん学校によっても違うでしょうから、一概には言えないでしょうが、どういう勉強をするべきなのかちょっと想像がつかなかったので・・・
もし、アドバイスがありましたら、小さな事でも結構ですので教えてください。

(4) 鍼治療の安全性について。

私の夫が通っているお灸の先生は、依然は鍼治療も行なっていたそうですが、彼女の先生にあたる人が、あやまって患者さんを鍼によって植物人間にしてしまった経験があるそうです。
そのため鍼は恐くてそれ以来やめてしまった・・・。ということなのですが、HPによると鍼によって神経をいためる可能性はまず無いということですよね。心配はいりませんか?

(5) 鍼灸 or あんま指圧マッサージ師

日本の専門学校に通う場合私が今取ろうと思っているのは、鍼灸あんま指圧マッサージコースという総合です。
というのは、やってみないと鍼灸or指圧マッサージのどちらが自分に向いているのかよくわからない・・・という状況だからです。
でもそうすると昼間フルに学校に通う必要があるようなのでちょっとキツイかな・・・という気もするし、まだ迷っています。
指の力の無い女性には鍼灸の方がいいよというアドバイスも受けたことがあるのですが、
客観的に考えるとどのようなものでしょうか。
もし、何かご意見をお持ちであれば教えてください。

長々と失礼いたしました。お時間のある時で結構です。
よろしくお願いいたします。


T.U様へ
「ツボ探検隊」のタイトルである、このページに頂くご質問で他を圧してダントツ多いのが、皮肉なことに「ツボ」に関する質問では無くて「鍼灸師になりたいのですが・・・」で始まるご質問の数々です。
雇用情勢悪化のご時世を反映してか、だいたい2,3日に一度は頂いている感じですね。
「鍼灸資格探検隊」のページにした方がいいかも。

ところで今日あなたから頂いたご質問はそれら全てを総括している
核心を突いた内容の様に思いますので、出来るだけ丁寧に私自身の考えを述べさせて頂き「Q&A」に掲載する事で漠然と鍼灸師を目指されている方々の足をしっかり地に付けて頂く一助でありたいと思ってます。

あなたのご質問は「・・that's all、では頑張って下さい」と私がキーボードを打ち終える瞬間の、おそらくかなりの疲労感とささやかな達成感を今から十分に予期出来る、かなり答え甲斐のあるご質問ばかりですよね。
さあ頑張ってみましょう!

まず最初に

「気功には公に認められている価値基準が何もありません。
もちろんだからといって気功の効果を過小評価するべきではないとは思いますが最近思うのは、自分が生涯をかけて仕事として行なっていくには、「不確か」過ぎるだろうかということです。」

に関してですが、全く正しい判断だと思いますよ。

実は結構な元手をかけて私自身「外気功治療」を日本と中国で6人の気功師により受けています。
それぞれ生徒や弟子を持つ「他のいい加減な気功師とは違うと自称される偉い先生方」ばかりですが私の運が悪いのか、心がけが余りに悪いのか全く何の変化も効果も起こりませんでした。

その割には時間も費用もかかり、直後は「物好きな遊び」をした気分でしたね。

私自身もほんの少しは出来ますが確かに「気」と呼んでもイイかも的な「風」が「手」から出ていた方も居られましたが、それと「人の病いを治す」事の間にはもの凄い距離があると感じました。
(もっとも暗示にかかりやすい方は別ですが・・)
真っ赤な顔をして汗をびっしょりかきながら私の身体に「手」をかざして「気」を送って下さるのですが、私には何の感触も伝わって来ませんでした。

中国の医師の方々も皆さんが外気功治療は不確かで信用出来ないと言われます。
ご自身も気功をされる先生も同様に私に言われましたのでこれは本当でしょう。

上海中医薬大学の気功研究所では、気功と同時にツボを指圧する「推掌気功」がメインで、気功の不確かさを指圧することで少しでも補おうとしているようです。
この「推掌気功」も実際に上海で私が受けましたがやはり「ツボ指圧」の効果ばかりを実感しました。
ハリ治療でもハリを持った指から「気」を入れる方法がありますので、私もそちらの方はちょっと練習中ですが、この様に「外気功」は他のしっかりと効果のある治療法に補助的にプラスする程度と一般的には考えるべきだと思います。
もちろん、外気功を全否定する気はありません。
広い世界には外気功の達人も実際に存在するのでしょうが、滅多なことでは遭遇するものではないと知るべきでしょうね。

これ(=外気功)に反して
「内気功」「養生功」は呼吸法を基にイメージトレーニングで自分自身の身体を鍛えたり
体質改善を計る事が出来る素晴らしい知恵だと思いますよ。
「内気功」はヨガと似てますね。


(1) どこで学ぶべきか?

結論を先に述べます。
「何処で学ぶべきか」よりも、今更ながらですが「誰に学ぶべきか」そして「如何に自分自身が鍼灸を愛し日々研鑽を怠らないか」に尽きますね。
実は現在これを書いているのは中国東北部(遼寧省)かつての満州から帰国間もないの8月10日です。
(昨年も同じく8月に10日ほど中国(紅蘇省)上海に研修に行きましたが大きな病院の鍼灸科だけで特別な技術を持った鍼灸医師が開業した個人医院には行けませんでした)

やはり鍼灸治療は学校などでのマス(大量)教育で学べるものではないのですね。
臨床現場の本当の名医から手取り足取りで時間をかけて手先のテクニックを教えて貰うか、又は自分自身又は家族の身体を実験台にしてコツコツと年月を掛けて中国の鍼灸古典医書から始まって(「素問、霊枢」「難経」「景岳全書」「鍼灸聚英」「鍼灸大成」等々)先達の研究書を多く読み、それらの内容に照合させて、手間暇かけた治療することで力をつける方法つまり時間をかけた自学自習法と二つしかないように思います。

ちなみに当方は「後者」ですが、今回の旅で名医の誉れ高い先生方の身体に実際にハリを打たせて頂き、予想外の称賛を全員から頂きました。(社交辞令ばかりでも無い様に感じました。)

最初にお会いした時は、正直言って先生方は私どもを小馬鹿にした態度でした。
仲介者の顔を立てたに過ぎないって感じですね。

後でお聞きすると過去に日本から肩書きの立派な多数の鍼灸団体の一行を迎え、講習なども行った経験があって、そのたびに日本の鍼灸師の実技力に対して大きな失望感を何度も味わったらしいのです。

そのような威丈高な態度の先生方もいったん私どものハリを受けると一変して顔色を失くされました。
彼らは日本のハリは細いのでハリの効果の響き(「得気」と言います)も小さいと信じていたのです。
ところが実際に細いハリで刺入時が無痛で有りながら、大きな「得気」が体内に起こるのを自分の身体で体験してビックリ仰天されたのです。
ハリ治療はハリで患者の身体に「得気」を起こすことで、すべからく病気を治療する医学ですから、
中国ではハリで「得気」を大きく起こせるのが鍼灸名医の第一条件であり全てとも考えられているのです。
打ったハリで「得気」を大きく起こせる医師ほど身体に新たな変化を創生させて多くの種類の病気を素早く治せる名医という考えなのですね。

その彼らとてのハリ刺入時がほとんど無痛で有りながら患者の体内では大きな「得気」を起こすことこそ「鍼灸治療の理想の姿」であると考えていることは私どもと変わらないらしくて理想の鍼灸師が目の前に現れたと思われたらしいのです。
「世界的な名医になれる人だ」と言って下さった先生もいたり
夢想だにしないお褒めの言葉を次々と頂きこちらの方こそビックリでした。

彼らは皆さん正直な方々で最初の胸を張り大きな声で朗々と自分の偉大さを私どもに説いた時からは想像も出来ないほど存在が小さく成ってしまわれました。
帰りにはどの先生方も表まで出てこられ、車で立ち去る私どもに深々と頭を下げて送って下さいました。
既に製造が中止された買い置きしてある貴重な古代式のハリをどうぞ使って下さいと沢山お土産に下さった先生もおられました。
その先生方の率直な豹変ぶりこそむしろ彼らの鍼灸を愛す心の現れの様に思い、誉めていただいた事よりも、正直なところ私には同志を得た喜びの方が遙かに大きかったのです。
言葉の壁をすっかり越えてお互いの長年の研究成果を時間の経つのも忘れて交換する事は本当に至福な時でしたね。
ずっと独学でやってきた私には同じ次元で語れて評価もされ理解を得る人物との出会いは格別な喜びでした。
以上の事柄は凄い自慢を長々と述べているみたいで本当に恥ずかしいのですが、結局、私が言いたいことは

「自分自身が鍼灸を愛し古典から始めて手を抜かずに一生懸命に自学自習すれば、日本にいても研究対象の人体は同じなのだから、中国で名医と呼ばれている有名な鍼灸医師に負けない鍼灸師に成れる」
と言ういことです。
この事をことさら強調したいために不本意ながら「自慢話」も書いてしまいました。

それから今ひとつ、
中国の鍼灸医師は古典医書で大基本である「素問.霊枢」を余り丁寧には読んでいない
事がよくわかりました。
私は趣味と言っても良いくらいに3日と開けず「素問.霊枢」をはじめとする中国医学の古書を30年間も読み続けていますので各先生方の話が、どの書物の何処に記載されている内容と類似しているかすぐ判ってしまうのですが
それを指摘しても、お一人以外はご返事が曖昧したね。
皆さんは実用的な近代に書かれた治療書を主に読んでいるのでしょう。
私の指摘に反応された、たった一人の先生は「実は貴方が指摘した書物(鍼灸聚英)こその私の研究の基になった一番大切な書物です。」
と感嘆されてしまい、それ以降ずっと信じられないくらいの親切さで
彼のこれまでの研究の全てを教えると意気込んでくれました。
(この後で既に生産中止になった古代式の貴重なハリを貰いました。)

古典書は絶対(原書で)にこまめに読むべしですよ。
(原書でないと、訳者の主観が入ってしまい本来の世界観が矮小化される可能性大。)

「勉強は基本的には自分次第」以前よりそうは思っていた訳ですが今回の旅でこのことをより一層に実感しました。
もし、同じ質問を旅行前に受けましたら間違いなく「中国で勉強する事こそベストである」とお答えしていたように思います。

とはいうものの、日本の鍼灸学校は一日3時間授業でたった3年しか在学しません。
付属病院を持っている所も少ない上にインターン制度もなく、本当に臨床力のある指導者が教えているとは言えないようです。

鍼灸医学は、科学的に効果の詳細が解明されていない訳ですから
(血行が良くなる事を発端とした様々な解説は実際の治療効果の速効パワーの凄さをとてもじゃあリませんが必要十分に説明していません。
血行が良くなる程度を起因とする効果なら他の様々な物理療法でも十分でしょう。痛いハリなど誰がやりますか?)

つまり患者を実際に治してナンボの医学ですから、本当の名医は学校などではなく臨床家として現場で病に苦しむ人々を助け活躍しているはずですよね。
この辺の事情は実は中国も日本と同じでしょうね。

確かに中国の医大で学べば、付属病院の規模も大変大きくて臨床経験は得られますので事情が許せば本当に留学されるのが良いとは思います。

でもその様な環境で生まれた中国の鍼灸医師でも、名医と呼ばれる人は滅多に存在しないわけで、個々の人間の病気を治す事が如何に難しいかと言うことですね。
基本的な教育を受けても結局病気を治す実力は卒業以降の本人の日々の研鑽次第で有ることはいずこも同じです。
鍼灸に限らず多分「技術職」は皆同様でしょう。

(2) 中国鍼灸と日本鍼灸について
私の「中国鍼と日本鍼」では言葉足らずで書き直すべきだと思いながら出来ていないのですが、「同じ程度に病気が治せるのなら刺激量が小さい方がベストである」
というのが本意です。
その意味で日本鍼で中国鍼と同様に病気が治せるとしたらその方が良いと書いたつもりです。

決して「日本人鍼灸師と中国人鍼灸師」というタイトルでは無いのですからね。
・・が実際には、中国で6年間かけて医科大学で鍼灸を学んだ鍼灸医師の方が日本の3年間で免許を取った鍼灸師よりも平均的治療技術レベルが高い事はしごく当然です。

世界的にはこれはもう中国鍼灸一色と言って過言でありません。
少なくとも中国では高校卒業後に医科大学(6年間)でしか鍼灸は教えませんから鍼灸師はイコール医者です。
西洋医学の、例えば外科医とも全く対等の医者です。
科目が違うだけって感じですね。
日本ではご存じのように視覚障害を持った方々も鍼灸治療を行いますが、中国の先生方にこのことを話すと皆さん眼が点に成ってしまわれます。
why? why? why? って感じですね。

鍼灸治療の際には経穴の位置、禁鍼部位の確認、等々で一番必要な解剖学(主に骨格)を眼の不自由な人がどうやって学べるのか、解剖実習も出来ないはずと憤慨されます。
日本では鍼灸はあんまやマッサージの一種で筋肉の凝りをほぐしたりする治療法の一つでしかないのですね。

日本のコンセンサスでは鍼灸は沢山の病気を治す「医学」では無いのです。
だから医科大学で教えませんね。
この様な事情の国が発行した「鍼灸資格免許」が世界で「医師」として通用しないのは当たり前のことです。
再度述べますが特に中国や欧米での通念では鍼灸師の資格は「医師」なんです。
欧米では鍼灸師と言えばだいたい「内科」の医師が多いようですね。

(3) 入試について
この回答が一番辛いですね。
早い話、先立つもの次第ということでしょう。
極端な話、もし1億円を寄付したなら入学させてくれない所はないでしょうから。
(これは私大医学部も同じかな?)
寄付金ゼロで入学するのは倍率も高く至難の業ということで、本当に腹立たしい慣習がまかり通っている世界です。


(4) 鍼治療の安全性について。
鍼灸のツボにはハリを深く刺してはいけないツボやエリアが幾つか有ります。
これは日本も中国も同じです。
その様な最低の約束事を守ってさえいれば何も問題ないと言うことです。

どの様なモノでも最低のルールはあります。
野球も頭にボールを投げつけたり、バットで頭を叩いたりすれば生命に関わります。でも注意深くルールを守れば野球の試合も全く危険ではありませんね。
西洋医学でも例えば、輸血だと血液型を間違うと大変なことになりますね、又麻酔でも量を誤ると植物人間にさせてしまう事があるでしょう?
やってはいけないルールはどの医学でもありますね。
そのような西洋医学の様々なルールに比べると鍼灸医学は刺した針も後で抜き取りますし、異物(薬剤)を内臓に送り込む事はありませんから守らなければ成らないルールが非常に少ないと言うことなのです。
現実には感染を予防する消毒が治療における最留意点になっていますけどね。

治療ルールを忘れて起こすトラブルでダントツ多いのが「気胸」です。
背中又は肩から「肺」に向かって深くハリを刺した場合に針先が肺にまで達してしまい肺に針穴を開けてしまうトラブルです。
肺という空気を溜める袋に穴が開くのですから、いくら深呼吸をしても空気が肺に溜まらず呼吸困難に陥ります。しかし時間と共にやがて小さな針穴はくっついて呼吸困難は収まります。特に体力のない人や老人では、穴が広がってしまって、なかなか塞がらず酸素吸入などを入院して受ける事になります。しかし適切な治療を受ければ取りあえず命に別状はありません。

貴方の仰る「植物人間」の可能性は後頭下部から脳幹に向かって不用意な程の深く又激しいハリを打ったケースでしょうか。でも本当にそんな事があったのでしうか?
後頭下部の幾つかのツボは深く刺してはいけないという鉄則があるのです。
しかし本当にそんなことが日本で起こったとはにわかには信じられませんけど。
それ以外のハリを打ってはいけない部分は「目の玉」とか「おへそ」の中とかですね。
でも実際にはおへそのまん中に15センチくらいハリを刺す中国の先生の糖尿病治療を見学しましたけどね。

たったこれだけのはっきりしたルールを守り消毒をきちんとしていれば問題は何もないはずです。
1センチ以内の深さなら前記の後頭部でも全くと言って良いくらい大丈夫ですよ。
まして0.5センチ以内なら前記の背中や肩の部分も含めて全身まずOKです。
日本中で沢山の目の見えない鍼灸師たちが毎日人の身体にハリを刺していることでこの場合は返ってハリの安全性が立証されるのではないでしょうか?

お灸も確かに効果が高いモノですが、熱い上に跡が残り易いので欧米では普通はやりませんし実際に現在の中国でも直接灸は流行らない治療法ですね。

その代わり刺したハリの体外に出ている部分に「もぐさ」をくっ付けて燃やしハリを温めることで体内に熱を伝える温灸鍼は日常的に行われています。
それと吸い玉療法が頻繁に行われています。
私どもの治療院でも患者さんにアルコールランプを使って容器内の酸素を燃やし陰圧にしてこの容器を身体に張りつける吸い玉治療を行いますが、日本では吸い玉治療を行わない治療院が多いようですね。

(5) 鍼灸 or あんま指圧マッサージ師
実はこれから私が述べようとしているのと同じ内容のコメントを他の書物などで読んだ記憶はないのですが、鍼灸とあんま指圧マッサージは全く別のモノです。
先ほどと同様にスポーツで例えますと、西洋医学は世界中で最も盛んな「サッカー」とすると「鍼灸」はさしずめアメリカや日本などで局地的に盛んなマイナーなスポーツ、「野球」でしょうか。
そして「あんま・マッサージ」はむしろ「サッカー」の一部なのですね。
「フットサル」をもっとミニにした感じかな?

西洋医学の解剖を基に全身の筋肉の「起始と停止」を把握してその方向に沿って筋肉を揉みほぐし撫でさする、筋肉を癒す為の技術です。
現在の学校で教える「あんま・マッサージ」はあくまで西洋医学の理論を基に行われる技術なのですよ。
筋肉を癒す西洋医学の補助的療法ですから、「あんま・マッサージ」のみで病気を治す方法を基本的には教えてはいません。

現在のあんま.マッサージは早い話決して中国医学を基にしたモノではありません。
ここのところが一番大事な相違点です。

ですから「鍼灸」を否定する西洋医学の医師は存在しても「あんま・マッサージ」を否定する医師は居ませんよね。

もう少し具体的に説明しましょうか。
鍼灸医学では体の中を手足を起点とした12本と身体の前後の正中線の2本のルートを加えた14本の気の流れるルートがあるというところから出発します。
そしてそのルー上に300以上のツボ(経穴)が存在するとします。
この14のルート(14経と呼びます)は血管でも神経でもありません。
もちろん解剖しても実体は存在しませんから、そんなものは妄想のようなものと言うのが現代医学の今までの常識ですね。
そんなルート上に存在すると言われるツボなども妄想の一部みたいなもので当然認められない訳です。
しかし実体が眼に見えないからと言って存在しないと言い切れるでしょうか?
ラジオやテレビは確かに自宅で見たり聞いたり出来るけれど放送局から我々の家まで空を飛んでいるそれらの電波の存在は眼で見えませんよね。
でも確かに電波は飛んできてテレビ受像機に反映してますね。
実体は眼に出来なくても、ツボに上手に針を刺して得た「得気」は確かにそのルートに沿って電波のように走ります。
そして14ルート上にあるツボを適切に刺激して「得気」を起こし、走らせると多くの病気が中国医学理論通りに治るのです。
即座に治る症状も沢山あります。暗示効果と疑う人もいるわけですが暗示の効かないはずの新生児や小動物でも全く効果のレベルは変わりません。
むしろ何をされているか判らない赤ちゃんほど効果は抜群です。

その効果が多くの人の目の前で実際に何度も確かめられ明らかであるからこそ現在の科学では治癒機転が解明されていなくても欧米を中心に世界中にドンドン鍼灸が広まっているのです。
21世紀は鍼灸の時代とも言われます。
ハリ刺激で生物が生まれながらにして持つ自然治癒力を操って病気を治す鍼灸は有限の薬剤を使わず省資源の超合理的な医学であり、人口が暴発している地球に最も相応しい医学であるという発想ですね。

とにかくそんな訳であくまで病気を治す目的の純粋な医学である鍼灸とそれ自体で病気を治す医学ではなくて身体の表面にある筋肉を癒す「あんま・マッサージ」は起源も違えば目的も全く違いますね。

もちろん必要とする勉強量も何倍も違います。
現在では鍼灸師も現代医学をしっかり学ばずには仕事が出来ませんね。
患者さんには病院で行った各種検査情報も必ず持ってきて頂いています
西洋医学もコンピュターの進歩に伴い、特に診断術を筆頭にこの20年ほどで飛躍的に変化し発達しましたからね。
それ以前の古い知識はほとんど役に立ちません。

ですから両方の医学を同じ程度のウエイトで勉強しないといけないので大変ですよ。


鍼灸は病気を治す医学ですから日本以外の国々ではまずは医師が行いますが、「あんま・マッサージ」は補助療法ですからそれらの国々でも医師が行うモノとは限りません。
言い換えると病気治療の為である鍼灸は本来は医師の仕事でありそれ自体で本来は病気治療を目的としない「あんま・マッサージ」はそうではないのです。

しかしこの「あんま・マッサージ」も鍼灸医学理論に基づいて上手に行えば色々な病気や症状に対して高い治療効果を望めます。
中国医学的に行えば筋肉の下の経絡ルートに効果を及ぼす事が出来るのです。

但しこの方法は学校では教えてくれないですね。
「あんま・マッサージ」の資格国家試験で問われるのは前記のような西洋医学的知識のみですから、国家試験合格の為に必要でない経絡.経穴知識は教えていないのでしょう。
これは東洋医学的知識について日本の医大では何も教えないのと同じ理由ですね。

最後に成りましたが貴方への私のアドバイスの結論はもうお解りですよね。
もちろん高い山に登って欲しいということです。

ちなみに私どもの治療院における目下の治療テーマは「抗生物質の効かない感染症」の治療及び「分裂病、鬱病などの精神病」の治療です。

それと今非常事態宣言の出ている「結核治療」にも実は良い結果を得て少なからず自信がありますのでこの治療にも力を注ぎたい気持ちでいます。

一応 5つの質問に余り(?)手を抜かずに答えたつもりですが貴方の疑問は果たして解けたのでしょうか?

取りあえずこの辺で...that's all とキーを打たせて頂きます。
(やっぱ予想通り ちょっと疲れましたよ)

これも予期した通り型どおりの言葉ですが

目標は達成してこそナンボのものです。
ガンバって下さい!

松岡


松岡先生。

この度はごていねいなお返事を早速に頂きまして、本当にどうもありがとうございました。
感動的なメールでした。

先生の熱意ほとばしるご対応は、お人柄はもちろんのことですが、
それに加えてきっと先生の鍼灸への情熱の深さゆえに生まれているものなのだ
ろうと推察いたします。私も鍼灸への興味を改めてそそられる思いが致しました。

先生のメールからわかったことは、まず、・鍼灸の技術はどこであれ学校を出ただけでは得られない・本物になれるかどうかは自分次第・生涯をかけて道を追求する気持ちで精進すべし・そして鍼灸とはその努力に十分値するこれらの点につきましては「よし!それでこそ取り組み甲斐もあるというものだ」

とやる気がでてきました。 ・・・しかし、・日本の鍼灸業界の閉鎖性とコネとカネが幅をきかせる受験事情こちらを考えると「うーむ。」とちょっとやる気をそがれる感じです。不安と不満。

しかし、(ふたたび「しかし」が入ります。ゆれる乙女心?をお察しください)

・日本にも松岡先生のような技術と熱意を兼ね備えた鍼灸師もいらっしゃる・いくら業界は旧態依然だとしても、やはり自分次第だという点。に加えて、・医学・サイエンスとしての鍼灸の奥の深さと面白味・環境負荷が少ない・自然に近い・高価な医薬品は不必要など、社会的に見ても優れたオルターナティブ医療であるという点を考えると、やはり私もトライしてみよう!いう気持ちが勝ちそうです。
ことに最後の点については、考えるものがあります。

というのも、そもそも鍼(というより「癒す力」それ自体)に興味を持ったのはマニラでのボランティア活動が基盤になっています。
(今私マニラに住んでいることは前回書いたでしょうか?)
夫の転勤でこちらに来てから3年ちょっとになりますが、その間こちらのNGOで働いてきました。もともと環境問題や南北問題等への関心があったのです。
しかし、環境問題も貧困の現実も問題が巨大すぎる!私なんかの小さな善意では太刀打ちできない・・・・といった無力感をたびたび感じていました。一体自分にできることって何だろう?といつも問い掛けていたように思います。
そしてそれに対するひとつの応えとしてあったのが他ならぬ「鍼」でした。

というのもNGOの仲間の多くが鍼の技術を持っているのです。彼らは遠隔地や貧困層の部落を定期訪問しては鍼治療を行なったり、只同然で鍼のクリニックを行なったりしています。
彼らの活動を見ていて思ったことは、決して規模は大きくはない。でも、目の前にいる人を確実に自分の技術で治せるということはなんて地道で素晴らしいだ。ということでした。
という背景で、私も何らかの治療技術を身につけたいと思ってきたわけです。
つまりいままでは・対個人への治療技術を通しての社会貢献というイメージが強かったものが、先生のコメントを拝見していて、・もしかするともっと広い意味での社会貢献の可能性も大きいのでは!?

という感じを抱いたわけです。(まだ漠然としてはいますが)なんか自分の中での鍼というものへの考えにうまく一致したという感じです。

長くなりましたが、私の今の思いを正直に書かせて頂きました。

マニラに住んでいることもあり思うように情報収集や勉強もままならないまま、試験の日程は近づいてくるので、焦ったりもしていますが、
とりあえず、今こちらでできることとして、小論文対策に作文の練習だけは始めたところです。(問題は生物です・・・・)

どうなることかわかりませんが、どのような形にせよ、自分のベストを尽くそうと思っております。

           T.U


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