★ 自分の脈を診たい ★

名前 = ショコラ♪
性別 = 女性
age = 40to49
メッセージ =
現在、定期的に鍼灸治療を受けています。鍼灸師さんは治療前と治療後に脈診をし、違いを確認しているようなのですが、私も自分の身体ですから、脈の違いを実感したいのです。
自分の脈って、自分で診られるものですか?もしできるのであれば、毎日行うことによって、その日の体調がわかるようになりますか?
そうなれば、転ばぬ先の杖になりますよね?


ショコラ様へ
お尋ねの「脈診」ですが、果たしてこれを素人の方が会得するのは至難の業、東洋医学を志す者も修得に大変苦労する診断技術です。

その証拠に「脈診」は中国からインドを経てオスマントルコに入った後、お隣りのギリシャ(西洋医学の発祥はギリシャからと言われています)に伝わり、今や現代西洋医学でも「脈を診る」事はごく普通に行われる様になっているのですが、しかし、本来は五臓六腑、全ての内臓機能をチェックする為の(脈)診断法のはずが、中国から欧州までの伝承経緯の果てに、いつの間にか西洋医学では「脈診」は単に「心臓」の拍動をチェックするだけの単一機能の診断術に成り下がってしまいました。

(むしろ、お医者さん自身が脈を診る事が中国医学から伝わった技術だとは知らないくらいです。)

その結果、現在どこの病院の先生も「脈」を診てはくれますが、「脈」を診て「朝ご飯も食べないで来ましたね!」なんて事は言ってくれません。
「脈診」においては空腹を示す「胃の脈状」は比較的判別が容易な脈ですが、病院のお医者さんに脈を診て貰っても規則正しく打っていれば「異常無し」と成り、空腹でフラフラだってことを脈だけでは言い当ててはくれません。

中国からギリシャへの伝承経緯の中で修得の難しい「脈診」は医者から医者へのいわば玄人(くろうと)間で有ったにも関わらず、難しいのでどんどん省略され骨抜きにされてしまったのです。

脈診教育は病人を診ることを仕事として志した「医者」に対してでも大変に難しいということなのですが、実を言いますと素人の方でも「脈診」に大いに興味を持たれ、研究に多大なエネルギーを費やした方がいるんです。
SONYの創業者である故:井深大氏で、氏は1989年にソニー脈診研究所を開設(研究所長 井深 大)しています。(彼自身が漢方家が驚くほどに脈診術をマスターし、周囲の方々の五臓六腑の診断をしていたそうです。)

彼は東洋医学の真髄とも言える「脈診」を科学的観点から研究し、計測可能な機械として開発して全身の健康状態を数値化出来るようにしたかったらしいのです。
その後社名はソニー生命情報研究所に変わったと聞いていますが、彼は1997年死去されていますので、この計測器が完成したという話は聞こえてきません。(未完のまま、とん挫?)
察するに手首に電極か何かを軽く触れさせ、微細な変化をコンピューターに解析させようとしたのだと思いますが、その計測はデリケート且つ非常に微妙で、人間が年月掛けて訓練しても修得が非常に難しいのですから、完成度の高い「健康診断」機として「使えるマシン」にするのは今後も果たして可能なのかどうか・・。 期待はしているんですけどね。

私のサイトでも「脈診」について簡単な計測要領を説明していますのでそちらもご参照下さい。
http://www.shinkyu.com/myakushinn.html

さて貴女のご質問の本意はその日の体調など、ご自分の健康状態をもっと的確に素早く知りたいと言うことですよね。
確かにご自分の身体ですからある意味ご自分がもっとも判断しやすいはずです。
例えば顔色、肌質(シミや小ジワ目の下のクマ等々も含む)や髪のツヤ、ピンク色の爪、爪半月、白目の色、舌苔の色と厚さ、声など自分で自覚出来る要素も多くあります。
声に関しましては、声質にツヤが有り音域が広い方が健康。身体が弱ると声量が減り、かすれて音程は低く成りますし誰でも寝起きは多少とも声の調子がかすれ気味の人が多いですね。
寝起きと日中の声の調子も少しも違わない人の方がそうでない人よりもより健康でしょう。
発声は体調がよく分かるチェックポイントですね。

快食快便に始まって、自分自身が感じる体の軽さ或いは重さ(同じ体重でも疲れると血行が悪いので体が重く感じます)寝付きの良さ、気持ちの良い目覚め、前日の疲労感の有無等々ご自分ならではの感覚も沢山あります。
日頃からチェックポイントを決めておき、毎朝ご自分をチェックする習慣をお持ちになると「脈診」よりも情報量が多い分だけ誤り(誤診)は少ないはずです。

上記の多くのチェックポイントもクリアし、ご自分でも「今は健康だ!」と感じた時に両手首の親指側の脈をそっと触れて感じて下さい。その時の脈状が貴女にとっての健康な脈ということに成るでしょう。これをしっかり記憶すれば、その脈状から感覚が離れるほど不健康時の脈に成ります。
(左手首の脈の方が少し力弱いのがデフォルトですから、多少の左右差は心配は要りません)


むろん、「風邪」を引いて熱がある時の大きく激しく浮いた脈、疲労困憊している時の消え入りそうに沈んだ小さな脈など、素人でも誰にでも分かる体調不良時の脈状態もあるのですが、その様な時は脈を診るまでもなく既に熱感や疲労感などの自覚が有りますので、脈診に頼る意味が無いんですよね。
やはり「脈診」は基本的に医者が患者である、初対面の見ず知らずの他人の健康状態を知る為の技術です。
ご自分の健康状態でしたら脈などよりも安易に自覚できるポイントをこまめにチェックされる方が得るところが多く賢明かと存じます。

 2005.9.21


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