>性別 = 男性 >age =20to29 > メッセージ > こんにちわ。 はじめまして。 > 私は、ツボと代替医療に興味をもっており、 > .鍼灸とカイロプラクティックについて僭越ながら質問させていただきます。 > カイロプラクターのなかには、鍼灸もカイロプラクティックも自然治癒力を引き出す点で同じであるが、カイロプラクティックでは、脊柱の歪みが全ての疾病の根本的原因 と考えている。このため、鍼でツボを刺激するだけでは一時的な回復は見られても、根本治療にはならないという考えがあるようです。 > 素人の私には、カイロのほうが説得力があるように感じるのですが、先生のご見解をお 聞かせください。 |
こんばんは! ツボ探検隊の松岡です。 御質問に対して分かりやすくお伝えしようとすると相当の字数を必要とする問題です。長く成ると思いますがご勘弁下さい。 >カイロプラクティックでは > 「脊柱の歪みが全ての疾病の根本的原因と考えている....」 これはまさしく「原因」と「結果」が逆になっています。もしもそれを言うならば「全ての疾病は脊柱に歪みを起こさせる根本的原因と成る」と言い換えるべきではないでしょうか? 何故かと言いますと、脊柱つまり背骨、骨格ですね。これは基本的に機動力を持っていないのです。 骨は自らが歪んだり曲がったりするパワーエンジンを持っていません。もちろん時には事故、或いは脊髄腫瘍などで骨格自体にトラブルが起きる事も有りますが、いわゆる疾患との関連ではむしろ病気が先にあってその結果、脊椎が歪んでしまう訳です。先に骨自身が自分の意志で勝手に動いたり曲がったりする訳では無く、あくまで周りからの圧力で動かされて「曲ってしまう」受け身の存在なのです。 ではどの様な仕組みで背骨が曲がってしまうのでしょう。それには先ず筋肉の働きを知る必要が出てくるのです。内臓は内臓筋(平滑筋)で動いていますが、骨は骨格筋(横紋筋)が張り付いて骨、つまり身体を動かしているのです。 また筋に付いた「腱」や「靱帯」は骨との関係をサポートしています。内臓筋は自分の意志では動かせないと同時に疲労しない筋肉ですが、骨格筋は自在に動かせるが様々な要因により簡単に疲弊する筋肉です。背骨の場合は周囲の筋肉が健康で均一ですと動かないで正しい位置に保たれます。つまり歪みません。 しかし例えば背骨の片側の筋肉が疲労して弾力を失い堅く成っていたり、逆に力無く緩んでいるとその部分の背椎は筋力の強い方向に引っ張られて曲がってしまいます。また背骨の左右両側が弱っている場合にはむしろ前後に飛び出して「ヘルニア」を起こしがちになります。昨今の腰椎椎間板ヘルニアによる腰痛が増えているのは現代人の筋力低下が一番の原因ですね。要するに脊椎の歪みを起こさせない為には筋肉を健やかに保つ事が先ず大事なのです。早い話「骨」を正しい位置に保てるかどうかは腱や靱帯も含めた広い意味での「筋肉」の問題ですね。私の治療院には欧米人の患者さん達も通院されていますが、日本人とは筋肉の質が丸で違いますので、当方の頭を欧米人用に切り替えて治療しないと上手く行きません。そもそも均質で強い筋肉を持った欧米人や中国人を診察してみると日本人ほどには骨は動いて(歪んで)いないですからね。 また一方で筋肉と内臓の関係で言いますと、「ヘッド氏帯」と呼ばれている現象が知られています。 これは分かりやすく言いますと心臓が悪いと何時しか心臓の裏側の背中の筋肉も悪い変化を来し、肝臓が悪いと肝臓の裏側の筋肉が痛んだりすると言う風に各内臓が悪くなると「余波」が及んで直ぐ後ろの背中にも異常が「伝搬」して来るという事実です。 例えば心臓が悪いと背骨の左側、心臓の真後ろの筋肉に異常が起き、その結果、心臓の背後の胸椎の5,6,7番目の骨に変化が起き易いのです。もしもこの場合にカイロの手技によりこれらの骨を正しい位置に戻しても骨を動かしている筋肉バランスを治さないと再び骨は動かされて元の様に曲がってしまいます。確かに心機能の異変により結果として起きた背骨の歪みをカイロプラクティックにより正す事でも、原因の心機能に良い影響を与える事は可能でしょう。しかし「背骨」を動かすに至った、心機能異変により変化を起こした「筋肉」を正す事の方が、その筋肉の影響で動いた「骨」を矯正するよりもよりダイレクトに問題の発端部分(心臓)の状態を改善する事は容易想定されると思います。 (もっとも当然ながらこの場合は副作用が少ない投薬治療で直接心臓を治す事が可能で有ればそれが一番早い訳ですが、これが肝機能障害の場合は著効を得る新薬も未開発で鍼灸が価値を発揮します)) そして実は背骨の両側の筋肉の歪んでいる中心位置に筋肉異常の「極点」として「ツボ」が発生しています。このツボを適切に用いると最も効率良く筋肉の異常が治まるのです。この場合は胸椎5番目直下の両側の筋肉中にある「心兪」、6番目直下両側「督兪」、7番目の「隔兪」の位置に心臓の余波でツボが発生し易いので、どれも心臓治療のツボとして伝えられています。 要するに心臓治療のツボとは心臓の異常により起こった「投影」ポイントに過ぎません。そして中国の非常に長い歴史により数限りなく繰り返し試されて判明している事はこの異常が投影した部分の「極点」=「ツボ」に「適切な刺激」を加えると投影元の異常を起こしている臓器に自己修復を加速する良い変化が起き始めるのです。 つまりこれは臓器から背部の筋肉へ投影された情報は決して一方通行ではなく、逆に筋肉から臓器へも情報がフィードバックして行く事を物語っているのです。 この臓器の異常が投影して弱体化した背中の筋肉をツボを使って癒すと今度は逆に病んだ臓器にその刺激が投影され歪みが正されて来るのです。そして当然ながら背中の筋肉の異常が正されたのですから、曲がっていた背骨は知らない間に勝手に真っ直ぐに戻っています。 わざわざ故意に骨を動かさなくとも有るべき姿に自然と戻るのです。相当に酷く歪んでいた脊柱でも両側の筋肉中にあるツボ治療で筋肉が正されて一ヶ月程できれいに真っ直ぐ整うことは鍼灸を生業としていれば少しも珍しくありません。 もうお分かりの事と思いますが、この方法で脊柱を正しますとカイロプラクティックで矯正した場合と比べると簡単には歪みが再発したりはしないのです。 カイロプラクティックで思い出しましたが、つい先々月のことです。病院の整形外科にずっと通っていた女性が少しも良くならないからと当院に来られました。訴えは「肩が凝って首が廻らない」という極く有りふれた症状です。最初の鍼治療で少し首が廻るようになりましたので、私は「あと2,3回の鍼ですっかり治るでしょう」とその患者さんに伝えました。そしてその後3回治療を行いましたが予想に反して治っていきません。 こんな風に予想を裏切られる事は長年の経験からも滅多に無いのです。「ツボの反応の仕方が絶対おかしい、何か有る!」と胸騒ぎを感じた私は「恐れ入りますが、もう一度病院に戻って精密検査を受けて下さい」とお願いして再検査を受けに行って貰いました。そこで進行した「延髄腫瘍」が発見されました。ずっと通っていた整形外科ではこの腫瘍を見落としていたのです。この方は頚椎に大きな歪みを起こしていましたので、もしも私がカイロの手技を行っていたら腫瘍の場所が場所だけに死亡事故を起こしていた可能性が大いに有り、本当にぞっとします。 (実は私もカイロプラクティックは若い頃10年ほど学んでいますので、滅多に無いことですが時にはツボ治療後にほんの少しだけアジャストする事も有るのです) その点、細い鍼はごく僅かな力を及ぼすだけですから、その意味では何事もなく、返って筋肉の異常レベルとツボとの不整合から背後の黒幕の大きさを感知することが出来ました。過去にも何人もの患者さんで病院で見落とされたガンを鍼治療効果とツボ表現との矛盾から察知した経験があります。つまり症状と投影点(ツボ)のミスマッチから病気の深刻さが分かるのです。これもツボ診断の重要なポイントで、カイロプラクティック治療が診断基準とする「骨格」に歪みが無い、歪みが起こる遥か以前でも、又骨に歪みが起きた後でも「ツボ」という僅かな皮膚変化で様々な診断と治療が可能です。既に色々な検査を行って病院から廻ってきたこの様な患者さんの場合、カイロプラクターは頚椎の歪みに気づいても「骨の変化」とその周囲の「筋肉」との不可解なアンバランスから、悪性腫瘍のへの危惧を抱くことは可能だったでしょうか? 「検査の結果、延髄腫瘍でした」と患者さんのご家族からお礼と共にご報告の電話を貰った時は「ツボ屋」で本当に良かったと心底胸をなで下ろしました。 ご参考までに最近当院に廻ってきた資料をご紹介します。 実際にもカイロプラクティック、整体、整骨院で起きた治療事故はトラブルが表面化して整形外科学会に報告されたケースだけでも最近一年間で694件にのぼっているそうです。 内容は」 ●悪性骨腫瘍の見落としや施術ミスによる死亡23件 ●施術による骨折106件 ●間違った施術による重い後遺障害118件 ●不適切な施術による症状悪化356件 となっています。 大きな力で身体を変えようとする治療法はリスクも大きいのです。つまり、これらの治療は熟達した上に慎重な治療家に依頼しないといけませんね。 これに反してツボによる鍼治療は多少成りとも痛いという「副作用」(?)は有りますが、大きな力で身体を変えよう、動かそうとはしませんから、江戸時代の昔から盲人の鍼灸師も多い訳ですが治療事故は非常に少ないのです。代替医療は何と行っても先ず「安全」「ローリスク」で有るべきだと考えると「ツボ治療」は外せないと思うのですが、ひょっとして余りに手前味噌に過ぎるでしょうか? ※私の意味する「ツボ治療」とはツボに鍼や灸を行うか微細な突起物を貼ったりする、ツボに大きな「他力」を加えない方法です。その意味で指先に体重を掛けて押すタイプの「ツボ指圧」は「安全なツボ治療」の範囲には必ずしも入らないと考えています。「ツボ指圧」は上記の施術方法に等しく大きな力(G)を相手の身体に加えますので特に骨粗鬆症など骨の脆弱な老人(女性)で骨折事故が起こっています。 ☆追記 この御質問にお答えした後、当院で後進の育成の為に毎月行っている勉強会で実際に腰椎に歪みの有る会員を見付けて鍼治療の実験をしました。歪んだ骨を元の正しい位置に戻す、骨を動かす治療は骨に触れずに周囲の筋肉を正すことでいとも簡単に可能である事を眼前で確かめて頂こうとの狙いです。治療前に全員に実験台となった方の骨格異常の存在とレベルを確認して貰い、その場で針治療を行った後にもう一度問題の骨の並びを触って確認して貰いました。一回の鍼治療でも適切に行えば正常な位置に骨が動いて行く事実をその目と手で確かめて貰いたかったのです。会員の中には実力派の接骨医として盛業、大活躍中の方も居られますが、その方をしても一回の鍼治療で骨が動いて歪みが正された事実を目の当たりにし鍼の効果に大いに驚いておられました。意外や他の若い鍼灸師さん達も同じ反応で、実は鍼灸師でも一回の鍼治療でも骨が大きく動く事を知らない人がたくさん存在するという事が判りました。私どもには言うまでもない当たり前の治療効果も後進には一々眼前で披露すべきと今更ながら思い至った次第です。 良い御質問を頂いたと改めてお礼を言いたい気持ちです。 |