★術後の夜間創部痛★

名前 = E・T
性別 = 女性
age = over50
メッセージ =
術後創部痛(腹部ー大腸癌・胃癌・胆嚢などの摘出後の痛みについて)、術後は数日硬膜外麻酔の持続注入によりコントロールしておりますが、夜間になると創部の痛みを訴える患者様が多く、今回、合谷の指圧による疼痛緩和に挑戦いたしましたが、他にもと効果的なつぼについて教えていただきたいのですが、お願いいたします。


ツボ探検隊の松岡です。
確かに術後の創部痛緩和は可能なはずです。なぜならば中国では手術そのものに麻酔薬を用いずにツボに打った鍼で痛みを抑える鍼麻酔手術が多く行われていたからです。

もっとも、生憎と日本ではそのような需要や機会も無くて、私自身も実際には経験が無いのですが、もしも術後の創部鎮痛を求められれば、「鍼麻酔」のツボを用います。
そもそも「鍼麻酔手術」は元来、鍼による鎮痛効果が非常に高いことから思い付いて開発されたのです。
現在はほとんど行われなく成りましたが、30年位前には中国文化の国威発揚的プロパガンダも有って、全土で頻繁に行われていました。
しかし実際にはその麻酔効果には個人差があり、リスクを考えると結局は麻酔薬の方が簡便で確実な効果を望めるので、今では行われなく成ってしまいました。(早い話、鍼麻酔の方が面倒くさい訳です)
※以前中国で当時鍼麻酔で手術を行っていた医師と話をした時、「鍼麻酔での手術はイヤだった」と上から強制的に命じられてやっていた事を告白してくれました。この外科医は日本生まれの中国人で日中戦争前に中国に戻っていた人でしたが、流ちょうな日本語で鍼麻酔の苦労話を色々と語ってくれました。

鍼麻酔も最後まで用いられていたのは、歯科麻酔、甲状腺手術などです。
これらは麻酔効果が容易に得られたからですが、このことは鍼による麻酔効果、つまり強い鎮痛効果は身体の上部に行くほど確実でも腹部~下半身~下腿に至ると非常に不安定だったのです。
もう一つ、鍼麻酔が一般化出来なかった理由に鍼を打つ鍼灸師の技術格差の問題も有ったと思われます。
なぜかと云いますと、手術中は患者のそばに付きっきりでツボに刺した針を適宜、手術の進行状態に応じて強く早く回転(撚鍼ねんしん)させばければ成らないのです。
最も強い痛みを起こさせる手術局面では急速に鍼を回転させて、鍼刺激による響き「鍼感」「得気」を強くしないといけません。
鍼麻酔手術も後には刺した鍼に電気を流すことで麻酔力を増強させる方法が取られていたそうです。
以上の鍼麻酔事情からも、つまり、ツボによる鎮痛効果は有ってもそれは体内に強い伝達力を持つ鍼だけで、鍼以外の例えば指圧などで確実な鎮痛効果を狙うのは非常に難しいということです。
出来れば鍼を打つ練習をしていただくと良いのですが、現状では現実的では無いかも知れません。
やむを得ず指圧で行う場合はまず、押すべきツボに鍼に変わる強い鋭利な刺激が伝わる異物などを貼り付けて行った方が効果的でしょう。
私どもではこのような意味でツボにアルミホイル玉を貼って頂く方法をお勧めしています。直径3~4センチ平方のアルミホイルを堅く丸めて5ミリ程度の玉を作り、ツボに貼り付けます。
指で押す場合はこの貼ったアルミホイル玉を皮膚に押し込むような感じで刺激すると効果が少しでもツボ内部に伝わるはずです。
これはツボの皮膚上面積が一般に指先よりも遙かに小さいミリ単位でしか無いために、太い指先で押しても、刺激波は細いツボ内部に確実に伝わらないのです。
早い話、この目的のために鍼が存在する訳ですから。

では肝心のツボですが、腹部手術の場合はメインは「足の三里」、適宜「豊隆」「梁丘」を加えて下さい。すべて足の胃経というルート以上に有ります。
手のツボは「合谷」よりも「内関」の方がお腹にツボ効果が及ぶので、より相応しいでしょう。頭部、顔面部の手術では「合谷」も良いでしょうが・・。

実際には手術後はこれらのツボは非常な痛みを発しているはずですから、周囲を押してみるとすぐに分かるはずです。

鍼麻酔の非常に重要な長所は術後の回復が明らかに早かった事です。
鎮痛効果を狙ってツボを刺激するだけでも、おそらく傷の治り具合など術後の回復速度は行わないよりは早くなるのではないでしょうか。
●足の三里(あしのさんり)
膝蓋骨外側を膝から3寸(約5~6センチ)ほど下がった所 押してみて痛みを確認する。腹部の術後は相当に痛いはずです。

○梁丘(りょうきゅう)
膝蓋骨外側、上縁の上約4センチの所。こちらもかなり痛いはずですので、押して確認します。

○豊隆(ほうりゅう)
外くるぶしの上、約15~16センチの所、押して痛い所

●内関(ないかん)

内側手首の横紋から上に向かって指幅2本分上がった所


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