日本人にとって多分最も馴染みのないのがホメオパシーではないかと思います。 私が初めてこの医学について、来日したフランス人医師から教わったのが約30年前ですが、 その後も日本においてその名が浸透した気配は全くありません。 19世紀初頭にドイツのザクセンの医師サミエル.ハーネマンが確立した薬物治療医学です。 「ホメオパシー」とは正確にいうと医学名ではありません。 病気の治療に対するコンセプトとでも言いましょうか。 薬物治療にはその病気の症状と反対の効果を生み出す薬で症状を押さえる治療法と、 逆にまるで火に油を注ぐかのように出ている症状と同じ状態を起こす薬を使う方法 つまり毒をもって毒を制す方法が考えられます。 これは例えば校内暴力で荒れている学校を沈静するために 体育会系の暴力教師を派遣して校内暴力を押さえ込むといった一見ちょっと難しい治療法です。 このような考え方の治療法を「ホメオパシー」と言いまして「同毒療法」とか「同病療法」とか訳されています。 これと反対の前者は現在一般的な薬剤療法で「アロパシー」といいます。 後者の「ホメオパシー」治療は、患者の容態の時間的推移を的確に読みとりながら治療を進める必要から豊富な薬物知識とデータの解析技術、豊富な経験が求められます。 勿論「ホメオパシー」の考え方は昔からあって ギリシャのヒポクラテスは、紀元前4世紀には 「同類をもって同類を治す。」という類似の法則をしっかり定義づけているのです。 これを基に、主に自分の身体で実際に人体実験をしながら、 この治療法では最も困難な治療の薬剤量を確定して 「ホメオパシー」を単なるコンセプトから一つの医学として確立したのがハーネマンです。 彼は1810年に「治療術の原則」(Organan of the art of healing)を出版し、 その治療法はヨーロッパに広く紹介されたのですが、 同時期に飛躍的に発達した近代医学にすっかりお株を奪われ衰退してしまいました。 ところが、近年、再評価の機運が高まり 本国ドイツはもとより、フランス、アメリカでも専門医が多く現れ、 イギリスではホメオパシー専門病院が設立されたり、王立ホメオパシー研究所が発足したりとヨーロッパやアメリカで急速な展開を繰り広げています。 現にホメオパシー治療薬メーカーは年々売り上げを大幅に伸ばしているそうです。 しかし、どういう訳か日本にはその波が全く及んでいません。 本当に不思議です。アウトラインはこれくらいにして、 実際に「ホメオパシー」治療の進め方を簡単に説明します。 そうすれば、なぜ今見直され、各国が再研究に力を注ごうとしているか、また鍼灸師の私がなぜ「ホメオパシー」を自分のホームページで皆様にご紹介しようとしているかがお解り頂けると思います。 判り易く病気を「頭痛」とします。 「アロパシー」=現在の一般的な薬物治療法=だと鎮痛剤(バファリンとかアスピリン等々)が処方されて痛みの原因を除去するというよりも、薬の作用で身体を変化させ、出ている痛みを感じないようにします。 原因に働きかけて治している訳ではないので、時に再発しやすく、慢性化させてしまうのを防ぐ手だても特にありません。 「ホメオパシー」ではこの場合その患者の実際に起こしている頭痛とピッタリ同じタイプの痛み方の頭痛を起こす薬を処方します。 (健康人を対象にして実験を行い、あらゆるタイプの頭痛を起こす薬がホメオパシーの治療薬としてリストアップされています。 薬種一覧ではヘーリングの「ホメオパシー薬種一覧アメリカ版全16巻」が最も完成されているようです。) すると同じタイプの頭痛を起こす薬なのですから飲むと、一時(いっとき)、頭痛がドッとひどくなった様な感じになります。 この時、身体は元々の頭痛の痛みを「10」としますと「10」の痛みに対して働こうとしていた自然治癒力(治癒に向かう生体エネルギー)を、 これは大変とばかり、突如もっと重病な「20」〜「30」の痛みの時に発するレベルに治癒力のエネルギーを強めるのです。 この突然のダイナミックな自然治癒力の勢いは頭痛のみならず頭痛を起こしていた原因にまで波及して治癒させてしまう可能性があるのです。 ですからホメオパシーでは、一時(いっとき)だけドッと症状を強める薬の最低量が常に求められます。 薬の量が多いと当然薬の痛みが残ってしいます。 薬は一瞬に症状を強める点火剤OR着火剤的に使用するのですから常に必要かつ最低限の量が決定されるべきなのです。 患者の治癒力のリアクションが弱くて痛みが残ってしまった場合は同じ症状を起こす別の薬(同じケースの実験データに基づいて決定された薬)を検索して処方します。 同じ薬を2度飲ますと身体は覚えていますので、もうダイナミックなリアクションが望めなくなるからです。ですから「ホメオパシー」では同じ薬を飲み続ける事はありません。 「ホメオパシーも痛みを取るのに薬を飲むのなら、鎮痛剤(アロパシー)を飲んで痛みを止めるのも同じ事じゃないの?」 そう思われるかもしれませんね。 でもよく考えて頂くとお解りだと思いますが、 ホメオパシーでは実際に頭痛を治したのはあくまで自分自身の自然治癒力です。 薬はあくまで治癒力の勢いを活気づけただけです。それに薬の量も驚くほどの極々微量です。(従って薬代金も安い。) 鎮痛剤は薬理作用が全身に及び、むしろ自然治癒力を抑制させる恐れもあり、常用すると副作用や慢性化も招きかねません。 その点ホメオパシー治療で治った場合は後の心配が何もありません。 慢性病やアレルギー性の病気は現在の西洋医学ではなかなか治療成果が上がらず悩みの種となっています。 そのような現状も含めて自然治癒力を強めて病気の原因を取り 副作用のない「ホメオパシー」が再び、おおよそ200年ぶりに脚光をあびているのです もちろん「ホメオパシー」にも短所が色々あります。 自然治癒力という生体の病気に対するリアクションを利用する為、余りにも衰弱していて生体が反応力を無くした患者では良い効果が望めません。老人に比べると子どもの方が効果が的確で速いのも同じ理由です。 症状が複雑で多岐に渡った重病患者も薬種の検索が困難です。客観的データによる診断がほとんど出来ませんので漢方、鍼灸医学と同様に医師個人の能力次第で治療結果に大きな差が出るのも問題です。 |