★英語圏で鍼灸を学ぶには?
名前 = Y I
性別 = 女性
age = 20to29
メッセージ =
はじめてメールを送ります。
このホームページには知りたい事柄がたくさん載っていてとてもうれしかったです。
質問させていただきたいのですが、私は鍼灸の勉強を始めたくて今、情報を集めているところです。
日本の鍼灸の問題点について、少し聞いたことがあったのですが、日本の鍼灸師の先生の方の口から(文字から?)知ったのは意外でした。
外国に少し住んでいたので、英語圏内でもし鍼灸の大学に進学するとしたら、どこの国がよいのでしょう?
自分では、英国の情報を調べているところです。
突飛な質問で恐縮ですが、もしなにかご存知のことがありましたらよろしくおねがいします。
アラブ諸国の方で英語を喋る方々も、皆 acupuncture  という単語を知っていて、世界に広まる東洋医学の凄さを感じました。


Yさんへ
こんにちは!
ホームページを見てくださってありがとう!
早速本題に入ります。
英語圏なら英国よりアメリカの方が学校数が多いので良いのではないかと思います。
なぜならアメリカには中国の医大のアメリカ校が競って進出しているからです。これなら臨床研修に医大の中国の付属病院に訪中出来ますよね。

友人の上海中医大学の教授によると日本にも同大学の関西校、東京校がありますがアメリカにも進出しているそうですよ。
中国伝統医学の大学は中国でも北京、天津、南京、上海、広州、・・ETC.たくさんありますが、それらの多くの大学がアメリカ校を持っているか、提携校を持っています。
特に中国では鍼灸は医師が行う医療であり日本のような「鍼灸師」という資格は厳密には存在しませんから高卒後医大に入学して卒業まで6年間かかりますが、アメリカでは入学資格は大学卒で4年制の鍼灸学校が多いと聞いています。中国の医大の卒業資格があればアメリカの場合ほとんどの州で鍼灸院を開業および営業出来るようです。
もっともこの辺のところは日々刻々とアメリカでも鍼灸への需要が増えて州毎に法律が変わってきているようです。

日本国内では日本で医師国家試験を合格した医師か日本の鍼灸国家試験に合格した鍼灸師でないと鍼灸を行えません
ですから他の国で取った資格は日本では通用しません。
中国で医師として開業していた先生でも、もう一度日本の鍼灸専門学校を卒業して国家試験を受けないとダメなんです。
でもどちらにしても鍼灸はマス教育では本当の臨床力は付きませんから、資格を取った後にどんな優秀な鍼灸医師に師事するかにかかっています。中国本土でも前記の医大で多くの鍼灸医師が生み出されていますが、患者さんから支持されて繁盛する個人鍼灸院を開業している鍼灸医師は滅多にいませんよ。
ですから保険診療の出来る大病院に勤務している勤務鍼灸医が大半です。それくらい中国でも個人で開業してやっていける優秀な鍼灸医師は少ないんですね。

私の友人の鍼灸医は中国でも”天才的鍼灸医”とたびたびマスコミで報道された方ですが、中国の医大で資格は取っても、臨床術はすべて師事した名医から教えられた独特の技術であって大学で習ったものではないと言っていますから、他を圧する技術力を持つためには特別な個人的修行が必要でしょう。
もっともその他大勢の平均的鍼灸医で良ければ大学卒業だけでも独学で臨床をしっかり行えば成れると思います。もっとも中国の平均的鍼灸医といってもやはり本場ですから他の国の鍼灸医よりはレベルは上でしょうけどね。
第一彼ら中国の鍼灸医は日本の鍼灸師と違って医師ですから薬の力にも頼れるのが何よりの強みですね。

それから、23年前にアメリカに鍼灸のデモンストレーションと講義に行きました。アメリカの著名な医師宅を転々とホームステイさせて貰いながらの長距離バスの長い旅でしたが、我々をホームステイさせる意向を著書も多い多忙な医師達が表明するだけでもアメリカの医師の鍼灸への関心の強さに驚いたものです。

その旅で驚いたことの一つはやはり、各地のバス・ステイションや通りすがりの人たちとの出会いの場で誰一人として”acupuncture”の言葉を知らない人が居なかったことです。
それこそ若いカップルでも老人でもみんな知っていて又ある程度の鍼灸知識を持つ人もいることにびっくりしましたね。


その後、日本に帰国して同窓生の高校や中学の英語教師達に”acupuncture”ってどんな意味か知ってる?
と聞きましたが誰も知りませんでした。
現在は知っている人増えましたけどね。

その当時、こんなにアメリカ人がみんな知っていて日本人英語教師が知らない英単語が有るって不思議でした。鍼灸師は日本のほうがダントツに多いのにってね。

鍼灸師はその当時アメリカにほとんど居なかったのに何故言葉だけは有名だったのかというと、ご存知かも知れませんがアメリカでは日本で言えば「女性自身」とか「週刊女性」的な女性雑誌でも最新科学情報のページが充実している事ですね。ですから日本と違って娯楽雑誌しか読まない人でも最新の医学や科学のニュースはフォローアップ出来ているのです。それがはるか23年前ですからね。

去年のアメリカの鍼灸などの代替医療の医療費が医療費全体の25%を超えたって知ってます?
日本では鍼灸の治療費はおそらく医療費全体の1%にも満たないはずですから如何に鍼灸治療がアメリカで急速に広まっているかだと思います。

要するに日本での鍼灸治療の経験者数は長い鍼灸の歴史がありながらアメリカよりもずっと少ないのが現状ですね。
日常的に見られる病気なら、まずほとんどは病院へ行くよりも鍼灸治療の方が速く治るんですけどね。このような鍼灸の知識を持っている一般の医師がまず日本にはいませんからね。

つまり日本人の英語教師が”acupuncture”を知らなかったのは英単語力の問題ではなくて一般の日本人が鍼灸そのものに医学としての関心や知識が無いからだと思います。
その原因はおそらく現代(西洋)医学への疑問や問題意識等々の科学全般に対する関心が日本人はアメリカ人に比べてずっと低いからだと思っています。医学イコール西洋医学と強く信じているのが日本の医師や日本人の特徴みたいなものですから、その様なミスマッチが起きるのでしょう。

明治時代のボタンの掛け違いが現代にまでずっと引きずっているんですね。
現在は日本の医師でも医学会などでアメリカに行かれて帰国すると急に鍼灸に興味を持つ方が多いのです。
アメリカの医師が鍼灸に関心が強くてビックリしてしまうようです。

現在の鍼灸に対する各国間の温度差はそのまま地球温暖化などの環境問題を始め現代の科学(医学)に対する問題意識の差であると私は思っていますけどね。 How about you ?


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