名前 = Y・M 性別 = 女性 age = 40to49 メッセージ = > 私は現在42歳(女性)の会社員です。大学卒業後、医療とは全く関係のない業界で働いてまい> りました。最近、東洋医学、特に鍼灸に興味を持ち、資格をとることを考えています。 > 健康には恵まれており、医者にかかる機会もあまりなかったのですが、最近いわゆる西洋医学で> は「どこも悪くない」と言われる症状(自律神経にかかわると思われる)と、凝りに悩まされ、> 鍼灸師・柔道整復師のお世話になりました。 > 私がお世話になった方は、医学の知識に基づく説明と治療で納得ができました。また、治療の際> にお話する中で、体質と思って、ある程度あきらめるしかない(と医者には言われた)と思って> いた症状を治せるのではないかという安心感を得ることができました。神経科にもかかったので> すが、この安心感のようなものは西洋医学の医師からは得られませんでした。 > 最近、癒しやリラクゼーションを謳った民間療法が多く見られますが、これには少し疑問を感じ> ます。その点、しっかりとした理論に基づいた技術と、さらに精神的な面でもケアできる(と思> われる)鍼灸師という仕事に魅力を感じております。鍼灸一筋…という貴院の方針にも共感致し> ました。 > そこで、お聞きしたいのは、私のような経歴・年齢でこれから資格をとって、鍼灸師を生業とし> ていけるかどうかとうことです。自分自身、開業する才能はあまりあるとは思えませんので、資> 格がとれたら、優秀な臨床家の下で研鑚を積みながら、腕を磨いていくというのが理想です。た> だ、生活はしなければなりませんので、求人就職状況(特に年齢的な点で)、収入が気になります。> アドバイスをいただければ幸いです。 |
Y・M様へ ツボ探検隊HPの松岡です。 えーっと、難しいご質問ですね。 実はこの数年で鍼灸師を養成する専門学校が雨後の竹の子如く新設されています。 (新設を規制していた法律を違法とする判例が出て以来、一気に鍼灸学校新設ラッシュが全国に起きています) つまりこの不景気に患者が減り廃業を余儀なくされている鍼灸院も出ている中で就職先もままならないまま鍼灸資格者だけが大量生産されるパラドックスが定着し始めているのです。 何処の鍼灸学校でも入学から卒業までにだいたい500万円以上は取りますから、このままだと鍼灸師の最も良い就職先はこのパラドックスの元凶に荷担する鍼灸学校の教員という事に成りそうです。 既にずいぶん以前から鍼灸学校の卒業生が鍼灸を生業とすることが困難に成ってきていたのですが、ここに来て又その現象に一層の拍車がかかってきています。 もう10年以上前から鍼灸院では食べられないと柔道整復師免許も取って「鍼灸接骨院」を開業する風潮が一般的になっています。 しかし柔道整復師の勉強はあくまで西洋医学の一端であり中国医学は直接関係有りませんから、鍼灸師としての本来の醍醐味を持った鍼治療を行うことは難しいでしょう。 と言うことは鍼灸師国家試験の合格者でも鍼灸を行う所へ就職出来る人は少数派なのです。大半は病院のリハビリ要員でマッサージを行ったり、接骨院での電気治療器具の操作管理要員(?)、鍼が出来てもせいぜいお慰み程度の初歩的鍼治療です。(これを業界では「柔整バリ」と言います。)このような環境では実を言うと鍼灸師がどんどん増えても鍼灸本来の実力を発揮する治療を行う鍼灸師は激減しているのです。 まず勤務鍼灸師について述べてみましょう。 鍼灸治療は正式な病気治療として保険が認められている訳でなく、西洋医学治療の補完としての電気治療などの物理療法の一種でしかないのです。 これは鍼灸治療を行っても十分な保険点数(治療費)が取れないことを意味しています。もっと具体的に言えば、病院などが鍼灸師を雇って鍼治療を行っても保険からは僅かなお金しか入らないので、鍼灸は病院の彩りとしての宣伝効果はあっても経営における「稼ぎ手」に全く成れないのです。病院内で「稼ぎ手」で無い職種の人間の給料は多いはずもなく上がるはずもないのは当然です。つまり病院では鍼灸師の給料は何年居ても看護婦さんの様には上がりません。 病院勤務だけの収入では同年代の平均的サラリーマンよりも安く、奥さんを専業主婦にして子供を大学に入れることなどまず不可能ということになります。 ・・・と言うことで若い男性の場合は余程の覚悟がない限りはこれから鍼灸師に成ることをお勧めできないのです。 もっとも親の財産を幾らも使えて給料等々どうでも良い方や開業資金が豊富に有るお金持ちは話はまったく違ってきますけどね。 しかし女性の場合はこの限りではありませんよ。元々女性の職業では手取り20万を取れない仕事はいくらもありますから鍼灸師だけが低いわけでは有りませんね。結論を言うと他の仕事に比べると面白い仕事だとは思いますが、なかなか経済的な面でお勧めし難い仕事なのです。 貴女の望まれる「優秀な臨床家の下で研鑚を積みながら、腕を磨いていく~収入も得られる」・・は大半の鍼灸資格取得者の理想でしょう。しかし鍼灸専門院でも本格的な鍼灸を行っている治療院は全国でも実は非常に少ないのが実状です。 私の所へも鍼灸専門院に通っている方々から何軒通っても鍼も少ししか刺さず、ほとんど効果が無いと訴えるメールが度々来てコメントに窮しています。まさしくこれは現実でしょう。優秀な鍼灸臨床家自体が「浜の真砂」の中からコンタクトレンズを探すくらい難しいのに、その中で弟子の「空席」を見付け同時に先生に代わって臨床もさせて貰える場を得ることは、幸運と偶然が幾重にも合体しないと果たせない希有なことの様に思えます。 もっともどこに幸運の女神が潜んでいるか分からないのも現実ですから、貴女の場合は先ずご自分が師と仰ぐに相応しいと感じた優秀な臨床家を鐘や太鼓で探し出し弟子入りの見込みを尋ねてから専門学校に入る方が良いのではありませんか? それから余りこれは言いたくないのですが、鍼治療には才能(センス)が要ります。才能が有れば多少は年齢を克服できるでしょうが、無い場合は年齢は本当に大敵です。大変熱心に勉強されていてもツボを読めるように成れない人の方が多いので、そのことを日頃から痛感しています。 逆にもしも小学校低学年くらいから始めて、そのまま研鑽を積んでくれれば誰もが相当の臨床家に成れると思います。 (現に中国の鍼灸医家に生まれ幼少より仕込まれ小学生からお金を取って患者さんを治療している方を知っていますが、各疾病毎の脈診断も治療方法も何も考えなくても全て身体が覚えていて、病人の脈を診ると無意識にもう打つべきツボに鍼を打っているそうです。 鍼治療術もやはりピアノや日本舞踊、バレエのようなお稽古事と同じで知恵付く前に「身体で覚える」べき技術的側面が相当に有るように思います。) 鍼灸学校は前述の如く費用も高く、その割に卒業後も経済的に報われない人も多くて悲しい話ばかり聞かされるのでついつい後ろ向きなアドバイスになって申し訳有りません。 ともあれ、 God Breath You ! |
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