龍江医院:鍼灸科主任の揚元得教授の鍼治療は私たち日本人鍼灸師が持つ「中国鍼」のイメージ(ツボ観察軽視による類型的骨度法取穴、太い鍼による大胆な施鍼など)とはずいぶん違ってました。これまで中国各地で鍼灸治療を見学させて頂きましたが、いつも「この鍼灸医が日本で開業したら果たして?」という営業的視点からの考察も自ずと行っていました。つまり中国ではOKでも痛みにデリケートでいわゆる「鍼当たり」も起こし易く鍼治療への無理解、不信感、不安感も強い日本人相手では実力を発揮するのは相当に難しいだろうと思わせる医師が大半だったのです。しかしこの揚医師はまったく違います。むしろ「門前市を成す」ほどの盛業となるに違いないと思わせるほどの施術の繊細さと刺入テクニックを彼は持っています。この日の我々一行7名は同行した中国人カメラマンを除いて全員が自己の治療をお願いしてしまったほどです。例えば絶対に痛いはずの「舌」に直接鍼を刺す「金津、玉液」のツボでさえほぼ無痛で行ったのには驚きでした。選択したツボも皮膚反応を触って確認した後に施術していますから、浅い鍼で刺入時の痛みが無いにも関わらず治癒率が高いはずで、院内が実に様々な症状の患者さんでごった返していたのも大いに納得でした。私としても今後の技術研鑽の指針として揚医師には大いに触発された次第です。


瀋陽市内中心部に有り、特に揚医師の鍼灸科が人気を呼んでいる病院です。

24時間、年中無休の診察を謳っています。中国では日本以上に病院間の生存競争が激しく、どこも患者さん集めに必死です。むしろこの辺りでは365日、24時間体制を敷いていない病院の方が珍しい感じです。
3階までの小規模な総合病院です。しかし患者さんで溢れていたのは揚先生の治療室だけでした。


受付窓口の上に各科の医師達の紹介欄が有ります。顔写真と共に卒業医科大学、肩書き 専門科目、得意とする疾患名などが記され患者さんにアピールしています。中国では患者が医師を指名して診て貰いますが、経験豊富で有名な医師は初診料が高いのです。一番上のランクが「主任医師」や「教授」で「副主任医師」「主治医師」「専任医師」などが続きます。医師のランクによる治療費の違いは院内の掲示板に明確に表示されています。
揚医師の紹介掲示板です。最初に書かれている「中医世家」とは歴代中国医学の医師の家系の出身者であるとの意味です。実際に「名医探訪の旅」で廻ってみても処世術に長けて立派な肩書きを持つ医師ではなく本当の意味で「出来る鍼医師」は鍼灸名家出身の人が多いです。恐るべし「門前の小僧」!
写りが悪くて申し訳ない様な写真ですが・・。揚先生です。






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